粘菌とは?
(笑)もう少し詳しく言うと、動物のように動いて餌を捕食する時期と、植物みたいに胞子を飛ばす時期と2ステージある生き物なんです。珍しいでしょ?
変なの!!動物は動物。植物は植物として一生を終えるものだとばかり思ってましたが…
・変形体と子実体
粘菌(変形体のとき)オートミールを食べようとしている。
粘菌名:アオモジホコリ(子実体のとき)
粘菌好きは、変形体派と子実体派に分かれますが、僕は変形体派です。毎日毎日、変形体を眺めてお世話をしています。見るたびにその美しい形状に見とれてしまいます。時間のある時は、一日三回も四回も観察しています。
ということで、今回は粘菌ニッチさんを紹介したいと思います。
粘菌ニッチ・片岡祥三さん
粘菌ニッチ 片岡祥三さん
粘菌に興味をもったわけ
4年前です。息子が粘菌に興味を持ち、一緒に調べ始めました。息子がしてくる質問に答えようと勉強しているうちに親子でどんどんはまっていきました。
粘菌観察(連くん10才、習くん5才)
というか、息子さんが粘菌に興味をもつきっかけってなんですか?
微生物の本を図書館で見ていた時ですかね?僕がプランクトン好きで。
ソライロラッパムシ
パキコダイリ
パキコダイリ
マミズクラゲ
えっ!!親子揃って小さいものが好きなんですね~。あと子供を図書館に連れていくの良さそうですね。
粘菌の魅力
動物的でもあり、植物的でもあり、
ミクロな世界なのに、
どことなく宇宙を感じることがあります。顕微鏡で変形体を観察すると
原形質流動が見られます。血管の中を血液が流れているように、管の中を
原形質が流れています。それを見ていると、『なぜ、生きているんだろう?生命ってなんだろう?』なんて…一点集中しながら、
時間を忘れて考えてしまいます。
粘菌の原形質流動を見て宇宙を想像する片岡さん(イラスト:ほそかわ)
毎日観察ということは、粘菌をご自身で飼ってらっしゃるんですよね?
はい!現在、三種類の変形体を飼育しています。黄色いイタモジホコリの変形体と赤いアカモジホコリの変形体、そして最近採取した種不明の黄色い変形体です。
(※野外で変形体を発見しても子実体にならないと粘菌の種別が分からない)
飼育中のイタモジホコリとアカモジホコリ
気になる飼育法
ここまでくると、なんだか粘菌を飼ってみたくなったんですけど、どうやって飼えますか?(好奇心旺盛なほそかわ)
採取場所
まず、粘菌のいる場所なんですが、湿った薄暗い落ち葉や木の下で発見することが出来ます。
保存と餌
濡らしたキッチンペーパーを敷いたプラスチックのタッパーの中で飼ってください。18℃~22℃くらいの暗い環境下に置いておけば生きています。市販のオートミールを餌として与えてください。
あの~、18℃くらいに保つのってどうしたらいいんですか?
保冷バッグに入れておけば大丈夫だと思います。寒くなったり、乾燥すると変形体は勝手に菌核(変形体が一ヵ所に集まっている状態)を作って活動しなくなります。
ワインクーラーに入った粘菌
22℃くらいが本当は粘菌が過ごしやすいんですが、その温度だとカビも繁殖しやすいので、18℃に保っています。
この後、ほそかわは片岡さんの粘菌を少し譲ってもらえることになりました。 |
粘菌のうんこ
う~ん。はっきりコレがうんこなのか?分からないんですけど、【ねちょっとしたもの】が、キッチンペーパーに残っています。排泄物がたくさんあるな~っと思ったタイミングで、新しく湿らせたキッチンペーパーに移動させます!
培養地交換方法
おもしろい!!生きてる!!って感じ!あと、粘菌ってキレイ好きなんだ!
病気とかは?
なんだか、非常に飼いやすそうな『粘菌』ですが、毒とかはあるんですか?
毒はないとのことですが、粘菌が病気にかかることはあるんですか?
僕は、粘菌の研究者ではないので詳しくは分からないんですが、突然黄色かった粘菌が一部黒くなったりするので、もしかしたら病気にかかっているのかもしれません!
突然、一部が黒くなった粘菌
(笑)変なこと聞きますね。酸味がある甘い匂いはしますね。森の匂いというかなんというか…
子実体の変わった保存方法
テレビ電話をしながら、取材対応してくれた片岡さんが子実体コレクションを見せてくれました。
標本一部
通常、
このような子実体になると
風などで胞子が飛ぶため現状維持が難しいのですが、
儚い子実体を保存する方法があるというのです!
|
ドライフルーツを作るときに使う乾燥器で子実体を乾燥させます。
そうしないとカビにやられちゃうんですよ
乾燥器にかけられた子実体
わ!ほんとだ!乾燥器にかけられてる!
ユニークだな… 乾燥器も粘菌を乾燥するために作られたわけじゃなさそうだし。
飼っていて気づいたことは?
飼いながら粘菌を親子で学んでるという話ですが、なにか粘菌をつかって実験とかしてみたりしますか?
あ!してますよ。人工的に変形体から子実体にしようと実験しています。
乾燥したり、餌がなくなったり環境が悪くなると変形体は、子実体になるはずなんだけど…
光を当てたり、乾燥速度を変えたり、餌を与えなかったり、何パターンか試しましたが、菌核になったり、消滅したりでうまく行きませんでした。
ほぼ水分なので、乾燥への適応が追い付かなかったのか、
菌核にもならずに、
タッパーから粘菌がシミだけを残して消滅していました。蒸発してしまったのかも?
最終的に、タッパーをベランダの外に放置したら、子実体になりました。これは人為的とは言えませんが、自然ってきっと絶妙なバランスで成り立っていて、生き物すべてがその中で、生きてるんだなと思いました。
粘菌名:クダホコリ
粘菌の可能性とは?
まだまだ謎が多そうな粘菌ですが、粘菌を育てていて、粘菌に可能性を感じたりしますか?
僕は、粘菌の生態や生活環の不思議が面白くて観察したりしていますが、基礎研究が進むと将来的に医学や工学などの応用研究でなにか世間が驚くような発見があればいいなと漠然と考えたことはあります。
ただ、 息子が粘菌の研究者になりたがっているので僕はそれを応援しています。
(大金があったら?と質問すると、【息子のために山の近くに粘菌観察小屋を建てて、顕微鏡を買いたい】とおっしゃった片岡さん。なんていいパパなんだ)
※2008年のイグノーベル賞(中垣俊之先生)は粘菌を使った研究で受賞しました。
①迷路を作り、粘菌を全体に張り巡らせる。
②スタートとゴール地点に粘菌の餌であるオートミールを置く。
☞粘菌は迷路を解き、スタートとゴール地点を最短ルートで結ぶ!
粘菌のルールを抽出してできたアルゴリズムは 、電力網や避難所マップ等の最適経路シミュレーションに応用されています。
『粘菌ってすごい!』
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ズバリ!片岡さんにとって粘菌とは?
シロジクモジホコリ
普段山に行くことはあまりありませんでしたが、最近では、時間があると山に行き、粘菌を探しています。息子たちとも一緒に楽しんでいます。健康管理やコミュニケーションツールとしてもとても面白いと思っています。
粘菌を知らない友達なんかも連れて行くと、結構、喜ばれます。粘菌を通じて色んな面白い方とも知り合いました。まだまだ追いかけたいと思っています。
片岡さんが粘菌のようにたくさんの人と繋がっていくんですね
編集後記…
本当は、【変形体は単細胞生物なのに多核である】とか、もう少しニッチなお話も伺ったのですが、粘菌にまず興味を持ってもらいたい!と思って書いた記事なので、書きたい気持ちは山々ですが踏みとどめました。
気になった人は調べてください。
あと、片岡さんを取材したり、他のニッチさんを取材して思ったのは、【ふんわりとした気持ちで好きなモノに向き合っている】ということです。(周りからしたらめちゃくちゃ頑張ってる風に見えますがね)
片岡さんは『観ていて飽きないから好き!』といったふんわりとした理由で『粘菌』に向き合っている方でした。
★でもそれぐらいの気持ちで始めるのがいい。
「好きを仕事に!」と叫ばれている昨今ですが、仕事にするゾ!みたいに意気込まなくてもいいと私は思います。【ふんわり好きなことに寄り添っていく生活】くらいの考え方のほうがみんな気が楽になりそうだ!と取材してて感じました。
最後におしらせ!
ヘビヌカホコリ(ホコリという名前だがホコリではない)
はい!粘菌もプランクトンも大好きで、どうして、こんな動きをしているんだろう?どうして、どうして…。そんなことを考えながら観察しているのが好きで、その観察が想像をかきたて、ついに物語まで作ってしまいました。
現在、
円盤というお店の企画で
『粘菌book ~粘菌ロンと楠公少年』という本を制作中です。
粘菌をテーマにした漫画を私が脚本を担当し、漫画家つるんづマリー氏が作画を担当します
粘菌ロンと楠公少年
あらすじ
粘菌の変形体と共生し始めた少年たち。少年たちが森に行くと、森の穴から声が聞こえてくる。声に導かれ穴に飛び込むとそこにいたのは、知の巨人と言われたあの偉人だった。
ある日、ロプノール湖に隕石が落下したことをきっかけに、伝染病が流行りだす。「アメーバ性脳炎では?」「いや、空気感染しないだろ」研究者志望の少年たちは、その原因に徐々に迫る。「君たちは地球の抗体だ」「見よ、この美しき世界を」研究者志望の少年たち、フクロウの幽霊、歴史的偉人たちが送る空想科学漫画です。(原文そのまま)
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知の巨人=粘菌の研究者・南方熊楠と思う人が何人いるか分かんないですが、こういった漫画から粘菌に興味を持つ人が増えたらいいですね!(突然のフクロウの幽霊が気になりすぎるだろ!)
粘菌研究者、南方熊楠研究者、微生物の研究者、写真家、日本変形菌研究会幹事と粘菌を愛する方々にも参加していただき、漫画だけでなく、粘菌を取り巻く不定型でアメーバ的な世界感を紹介しようと制作しています。
実は、shop円盤が制作するインディーズの本なんです。 円盤の店頭、及び、日本全国の円盤提携店で発売予定になっております。円盤の提携店には、本屋、レコード屋、CD屋、喫茶店、飲食店、イベントハウスなどなど、色んな業種のお店が連なり、円盤店主が日本全国を歩き回り作り上げたシステムになっており、そのネットワークがいかにもアメーバ的で面白いと思っています。
おお!!インディーズで!!儲けとか考えずに頑張ってるんですね!
粘菌のプロや漫画家さんと頑張るので、『粘菌book 粘菌ロンと楠公少年』をお楽しみに!
粘菌愛ゆえに作る漫画!
ほそかわも期待しています!
完成したようです
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