丸善に置いて帰っちゃだめですよ

丸善に置いて帰っちゃだめですよ
Pocket

数時間前にインターネットで見つけた人間とのやりとりである。

『丸善に置いて帰っちゃだめですよ』

私は久しぶりにオシャレな人間に出会ってしまった。


遡ること数カ月前。

近畿大学が開発した『SNSを分析してあなたにおすすめの本を紹介してくれるアプリ』をあなたはご存知だろうか?

アカデミックシアターの診断コンテンツだ、

https://act.kindai.ac.jp/personality_test/

https://act.kindai.ac.jp/personality_test/

SNSに連携するか、質問に答えればAIが自分に合った書籍を提案してくれる。

2019年6月4日に診断してみたらオススメされた本

2018年10月24日に診断していたのをたまたまスクリーンショットしていた。わたしはこういう性質があるらしい。

近畿大学の子は大学の図書館で借りることができるのだろうが、わたしは近大生ではないので、診断結果に表示された本をAmazonで注文した。

AIは本当に私のことを分かっているのか?

人類の抵抗のつもりで購入した本だったが全く読まずに本棚にしまっていた。

この人おもしろい

質問箱に来た質問を真面目にふざけて返すのが好きだ。

この回答にいいねしてくれた複数の人間がいたが、はじめて見かけるアカウントの人がいたので、その人のプロフィールを覗きにいった。

ブログを書いていたのでこれまた覗いた。

面白い。

文章の節々にインテリを感じる。

彼女いない歴=実年齢ということで、なかなか人生をこじらせていそうだが、こじらせたからこそ書ける人間の思考回路は貴重。

わたしは、自信に満ち溢れて人生を生きてきたので彼のような思考に至ったことがない。だから、貴重である。

「おもしろい!おもしろい」と絶賛コメントを書き込み、彼のTwitterをフォローすると、

DM(ダイレクトメッセージ)が来た。

田島春を

>ブログのシェアありがとうございます。
よろしければ、何かほそかわさんの企画で手伝えることがあればお声掛けください!

という内容だった。

(あぁ、ブログから感じられる面白さがすこし欠けて普通だな)と思ってしまい、ふわっと返信。そして、レモンのスタンプを送った。レモンのスタンプを私はよく使う。

Twitterカラーの水色とレモンの黄色が視覚的にさっぱりして可愛いから使用していた。

「丸善に置いて帰っちゃだめですよ」

レモンのスタンプ

「はぁ?」

レモンのスタンプを送って、この返信は明らかに変だ。

大抵の人間は、「はぁ?」ってなると思う。私もそうだった。

気持ち悪くて
「レモン・丸善に置いて帰る」で検索した。

レモンではなく、漢字での「檸檬」表記が多い。

「檸檬」

待てよ。見たことある。どっかで見たぞ私…。

本棚を探す

あった!

そう、半年前に近畿大学のAIアプリでおすすめされて購入した本だったのだ。



短編小説:檸檬のあらすじ

「えたいの知れない不吉な塊」が「私」の心を始終圧えつけていた。それはカタル神経衰弱借金のせいばかりではなく、いけないのはその不吉な塊だと「私」は考える。好きな音楽にも癒されず、よく通っていた文具書店丸善も、借金取りに追われる「私」には重苦しい場所に変化していた。友人の下宿を転々とする焦燥の日々のある朝、「私」は京都の街から街、裏通りを当てもなくさまよい歩いた。ふと、前から気に入っていた寺町通果物屋の前で「私」は足を止め、美しく積まれた果物や野菜を眺めた。珍しく「私」の好きなレモンが並べてあった。「私」はレモンを一つ買った。始終「私」の心を圧えつけていた不吉な塊がそれを握った瞬間からいくらか弛ゆるみ、「私」は街の上で非常に幸福であった。「私」は久しぶりに丸善に立ち寄ってみた。しかし憂鬱がまた立ちこめて来て、画本の棚から本を出すのにも力が要った。次から次へと画集を見ても憂鬱な気持は晴れず、積み上げた画集をぼんやり眺めた。「私」はレモンを思い出し、そこに置いてみた。「私」にまた先ほどの軽やかな昂奮が戻ってきた。見わたすと、そのレモンイエローはガチャガチャした本の色の階調をひっそりと紡錘形の中へ吸収してしまい、カーンと冴えかえっていた。「私」はそれをそのままにして、なに喰くわぬ顔をして外へ出ていくアイデアを思いついた。レモンを爆弾に見立てた「私」は、すたすたと店から出て、木っ端微塵に大爆発する丸善を愉快に想像しながら、京極(新京極通)を下っていった。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「丸善に置いて帰っちゃだめですよ」

はじめてその意味を分かったときの感動たるや!

田島氏へ
「レモンスタンプ1つへの返信がお洒落すぎやありませんか?」

私は、「檸檬」の作者:梶井基次郎を知らなかったのだが、作家の間ではとても評価されている人だった。

舞台となった、京都の丸善書店では檸檬を置いて帰るというムーブもあるそうだ。

なんて、知的で可愛い行動なんだろう。

結果、短編小説「檸檬」は面白かった。

私はAIに負けたのだった。


(文章)ニッチほそかわ @nichebito

ニッチな人募集☟

ニッチさんはアンケートに答えてね

LINE@ 

友だち追加